ホロスコープから見るブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴ<3>

2009年10月31日 00:43


ホロスコープから見るブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴ<2>から続き

マイク・ラヴズ・ネイタルチャート
http://www.astro.com/astro-databank/Love,_Mike

【1】マイク・ラヴとビーチボーイズ

マイク・ラヴの海王星は乙女座26度に位置しています。
この位置は、ブライアンの海王星とほとんど同じです。海王星は太陽の周りを非常にゆっくりと、約165年かけて一周します。こうした公転周期の遅い惑星は、同世代のチャートで、ほぼ同じ位置に置かれることになるのです。
しかし、チャート上の意味は変わります。地球の自転の影響で、天体が位置するハウスが変わり、また、運行速度が速い他の天体とアスペクトを形成することで、それぞれ異なったシンボルを表わすようになるからです。

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マイクも非常に存在感の強い海王星を持っています。
まず、太陽とオポジション(180度)。ブライアンのチャートでも説明しましたが、オポジションは緊張を孕んだアスペクトです。お互い反発し合いながらも決して無視することが出来ない強い結びつきを表わしています。ところが、マイクのチャートには、この緊張関係を解きほぐす天体が存在しています。天王星です。
天王星は太陽とセクスタイル(60度)、海王星とはトライン(120度)と、それぞれ調和的なアスペクトを描いています。これは「調停」と呼ばれる複合アスペクトのパターンのひとつです。180度でせめぎあっている太陽と海王星を天王星が仲立ちをすることで、二つの天体の間にスムースにエネルギーが流れる新しいラインが作られる。そのようにイメージすることが出来るでしょう。【1】

太陽と海王星の関係から見ていきましょう。占星術では、ホロスコープで対向する位置にあるサインやハウスは、それぞれ反対の意味を持っていると考えます。180度のアスペクトが緊張関係を表わすのは反対の意味、つまり、自分に欠けたものを常に意識させられるからだと言われています。
マイクの180度は第10室と第4室で形成されています。
第10室は、その人が活動するステージとしての社会を表わすハウスです。ここに太陽があるということは、仕事を通じて自己を形成したい、仕事で認められたいという思いを強く抱くことを示しています。しかし、そのような彼の太陽は常に欠落したものを視野に入れています。それが第4室の海王星です。

第4室は第10室に対向するハウスなので、ちょうど逆の意味です。私たちが何か活動するために向かう先が第10室だとすれば、第4室は私たちが生まれたところ、そして、帰っていくところです。もっと抽象的に、私たちの帰属意識が向かう先、自己と歴史感覚が接続される場所とイメージしても良いでしょう。
こうしたことから、家庭、故郷、国家、あるいは晩年といったものが第4室の象意になります。そして、ここに位置する海王星はそれらへのロマンティックな憧憬を表わしていると考えます。
マイクの場合、さらに、人生の発展の方向を示す月のノースノードも第4室にあります。
ビーチボーイズは、ロックバンドという以前にウィルソン三兄弟と従兄弟のマイク・ラヴで結成されたファミリー・グループでした。そして、グループのデビューにはウィルソン兄弟の父親、マリー・ウィルソンが関与しています。彼らがいなければ、今のマイク・ラヴはいません。マイクは第4室が表わす物事に強く関わりながら人生を築いてきたのです。

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それだけに、天王星の調停は重要なものとなります。もし、天王星がこの位置に無ければ、マイクの太陽は海王星が表わす物事と上手に関係を結ぶことが出来ず、強迫的にそれらを否定し続けるといったことになっていたかもしれません。ですが、マイクは第4室が表わす物事に積極的に関わり続けることが出来ました。それだけではなく、彼は結成当初のビーチボーイズのイメージにもっともこだわったメンバーであるとも言われています。それは時にグループの前進を押し止めることにもなった。有名な悪評です。マイクは時計の針を巻き戻すかのようにバンドを過去へ過去へと退行させたと評価されています。それが正しいかどうかとは別に、マイクが今でもビーチボーイズにこだわっているのは事実です。ブライアン・ウィルソンがソロアーティストとして活躍する一方で、彼はほぼ一人でビーチボーイズの看板を立てて活動しています。

さらに、マイクの悪評を思い出してみましょう。その中には、彼が抑圧的な道徳の信奉者であることや保守的な政治信条を持った共和党員であることなどがありました。実際、彼は80年代に問題になったロックの歌詞検閲運動に賛意を示しています。また、70年代末以降恒例になった独立記念日のコンサートでは「愛国心をもって音楽に臨む」と積極的に旗振り役を務めていました。これらもまた、太陽−海王星−天王星のシンボリズムから想起させられるエピソードです。海王星のロマンティックな夢想が故郷や国家というものへと向けられ、それが天王星の理想主義的なイデオロギーの仲立ちを受ける。

面白いのは、こうしたことが創作へと昇華された例もあったかもしれないということです。
彼が歌詞を書いた「California Girls」を思い出しましょう。東海岸の女の子も、中西部の女の子も、南部の農家の娘も、北部の女の子もそれぞれかわいくて大好き。みんなでカリフォルニアに来て、カリフォルニアガールになってくれれば良いのに、というパトリオティックな感受性を持った歌です。この「California Girls」はビーチボーイズの代表曲のひとつになりました。ライブの定番曲として彼は何百回とこの歌を歌ってきたことでしょう。歌い手の視点はアメリカからカリフォルニアへ、そして、ビーチボーイズ=家族へとズームインしていきます。天王星の直観の冴えが海王星のロマンティシズムをオリジナリティ溢れる表現へと押し上げた。そのように見ることも出来ます。

彼の保守性はありふれたもので、ことさら目くじらを立てるようなものではないという、冒頭で紹介したフォーラムでなされている反論はたぶん正しいのでしょう。ですが、こうした悪評込みで、マイク・ラヴには不思議な魅力があります。
星の配置は、彼の政治信条が彼自身の性質に深く根ざしたものかもしれないということを物語っています。そうであるなら、マイクは自分に嘘をついていません。その意味で、彼は誠実なのです。

【2】マイク・ラヴとトランセンデンタル・メディテーション

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もうひとつ、マイク・ラヴの「誠実さ」を検証してみましょう。
マハリシ・ヨギーのトランセンデンタル・メディテーション(TM)との関わりです。これも、彼の愚鈍さを物語るエピソードのひとつとして揶揄気味に語られています。
60年代に圧倒的な人気を誇ったグルー、マハリシ・ヨギーと彼の唱導する瞑想法は、当時多くのミュージシャンや映画業界人たちに支持されました。ビーチボーイズのメンバーたちも例外ではないのですが、中でも彼にもっとも熱を上げたのがマイクです。ビートルズやドノヴァンらとともにインドにまで修行に出掛けたのは有名なエピソードですが、彼はブームが去った後でも一人マハリシを支持し、現在もマハリシの教えによる瞑想法を実践していると言われています。
このことを何故、彼の知的誠実さと受け取ってはいけないのでしょうか。

マイクの太陽は魚座24度にあります。【2】
サインの最大度数は30度と決まっているので、これはかなり後半に位置しています。
ここで度数域という考えを採用してみましょう。度数域については、私自身まだ十全に身に付けていないので、松村潔『占星術研究会』(1995年、シャングリラ・プレス)を参考にしながら見ていきます。
魚座は共感によって世界を体験しようとする性質を持ったサインです。しかし、これが後半度数に進んでいくと、そうした本来の性質を相対化、高次化する視点が生まれてくるのだそうです。魚座は個人レベルでの共感を超えて、世界そのものの理解を望むようになる。「悟り」のようなものを求めるようになる。

また、水星は水瓶座、第9室に位置しています。第9室は哲学や思索、高等教育などを表わすハウスです。そうした知的活動への強い関心、そして水瓶座なので、高い知的能力を備えていると見なすことができます。
さらに、ここでも度数域を検討しましょう。マイクの水星は水瓶座の最後の度数、29度に位置しています。水瓶座の知性が度数域の終盤でどのようなものになるのか、松村潔氏の見方がやはり面白いです。水瓶座は客観的、科学的な知性を表わしています。その最終段階では技術への圧倒的な信頼へと到達するのだそうです。なお、松村氏は特に註釈していないのですが、この技術とは機械技術のみを意味したものではないでしょう。

「悟り」「技術」。ヨーガの技法であるTMのキーワードが二つも出てきました。
もうひとつ、「身体」というキーワードも拾ってみましょう。身体を表わすのは第2室です。ここは金銭についてのハウスなのですが、金銭収入は自分の身の回りにあって自由に使うことが出来るものなので、身体も同じ性質のものと見なし、第2室が表わすものになります。
ここに限界突破の天体、冥王星が入っています。身体的な実践においては、中途半端を知らない徹底したものを持っていることを示しています。そして魚座の太陽とトライン。太陽が表わす自我と調和しています。

さらに、9室の水星は月を介することで、冥王星−太陽のラインとも視線を交わすことになります。
まず、水星は第5室、天秤座の月とトラインです。知的な精神活動が気分的な心地良さを呼び込むという配置です。この月が冥王星とスクエアを形成します。
月と水星の関係はソフトです。水星が表わすコミュニケーションや知的活動が活発になればなるほど心地良い気分に浸れるということを示しています。一方、冥王星とはハードな関係です。月は天秤座なので、周囲の人と楽しく過ごしたいという欲求が阻害されて苦痛となったこともあったかもしれません。しかし、ハードアスペクトがもたらす困難の克服は、その人の人生にクリエイティブな実りをもたらします。
水星が表わす知性は頭の回転の速さといった程度のもので、木星の哲学的思索や天王星の科学的知性のような洗練されたものではありません。月との調和は知的、感情的な安定を表わしますが、その関係の心地良さが怠惰を招き、知的な能力によって実りを得ることを逃してしまう可能性もあります。マイクとTMとの関係において、この部分の不調和はむしろ幸運なものでしょう。
マイク・ラヴは、TMを一過性のブームの中で消費しなかった数少ない人物の一人です。星の配置は、TMが彼にとって非常に相性の良いものだったこと、そしてそれと同時に、チャレンジングな側面があったことを示しています。

【3】なぜマイク・ラヴは軽薄に見られるのか

ところが、この月と冥王星をもっと教科書的に読むと、途端に悪役マイク・ラヴのイメージが復活してきます。
例えば、第2室の冥王星は金に関することへの執着を表わしています。それが第10室太陽の職業上の野心とよく調和している。また、月はうつろいやすさや不安定を表わします。これが結婚を表わす第5室に入っている。マイクは結婚、離婚を繰り返し、現在、別れた妻たちへの慰謝料の支払いに苦しめられてると言われています。月は金銭の第2室に入る冥王星と不調和なアスペクトです。

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とにかく、マイクの悪役イメージは強いです。
マイク・ラヴのアセンダントは双子座。これは彼自身の軽快な印象となって表れているはずです。
また、MCはチャーミングな魚座。そしてMCから10度先に進んだところに金星、さらに8度進んだところに太陽があります。金星と太陽は、ややオーブが開いていますが、コンジャンクション。マイク・ラヴもまた多くの人に愛されるポップスターであり、彼自身そうしたイメージを強く打ち出そうとしていることを表わしています。【3-1】
マイクが人に与える印象は決して悪いものではないはずです。でも、それらはストレートにチャームポイントとして受け取られない。それらはネガティブなイメージに反転されて、軽薄で凡庸なセールスマン、マイク・ラヴになってしまう。これはおそらく、マイクがブライアンとの対比によってしか語られないからでしょう。


ブライアンのアセンダントは牡牛座です。そこにライジングする天体として、牡牛座の金星と、双子座の天王星、土星が関わってきます。静かな物腰の中に金星のエレガンスや天王星の他と比較出来ない独自の雰囲気を宿しているといった感じでしょうか。マイクが持つイメージとの相違は明らかです。
ブライアン・ウィルソンを絶対視したうえで、そこにマイク・ラヴを対比すると、マイクの軽やかさ、かわいらしさ、スター性は、途端に凡庸さという見かけをまとうことになるのです。
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面白いことに、ブライアンとマイクのこうした対比は、二人の相性図(二人の人物のネイタルチャートを重ねたホロスコープのこと。このチャートで形成されるアスペクトが相性判断の材料となる。)にもはっきりと表れています。

マイクのMCは魚座6度42分です。相性図ではアスペクトのオーブはタイトに取るので、細かく見ていきます。ここに、双子座5度27分にあるブライアンの土星がスクエアで重なって、ブレーキをかけています。これはどういうことでしょうか。【3-2】
MCは世の中に打ち出していく自分のイメージを表わしていました。これは、マイクが自分の魅力を表現しようと試みても、ブライアンの土星に邪魔をされて上手に表現できないということを表わしているのではないでしょうか。もちろん、ブライアンがそうした意図を持っているということではありません。どうしてもそうした関係になってしまうということです。


【4】マイク・ラヴと「グッド・ヴァイブレーション」

一方、ブライアンにとっても、マイクの土星はなかなか厄介な位置にあります。【4】
マイクの牡牛座11度31分の土星は、ブライアンの第5室、乙女座11度34分の月と正確にトラインを作ります。第5室は創造のハウス。ものを作るうえでの気分の高まりにブレーキをかけられる。そうしたことを表わしているのですが、私はもっとポジティブな結果となったケースを思い出しました。彼らの最大のヒットシングル「Good Vibrations」でマイク・ラヴが果たした役割です。

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マイクが歌った"I'm picking' up good vibrations..."というサビの印象的なサイドメロディは、彼が即興的に付け足したものだという説があります。この旋律の重要さは、「Good Vibrations」を聴いたすべての人が認めることでしょう。マイクのサイドメロディは楽曲に強い輪郭を与えています。これがなかったら「Good Vibrations」は大ヒットすることはなかったかもしれません。
現在、CDのボーナストラックなどで、「Good Vibrations」の初期バージョンをいくつか聴くことが出来ますが、マイクのサイドメロディが無いバージョンは、ただただやかましいだけで、個人的な感想ですが、聴くに堪えるものではないと思います。しかし、そこにマイクの低音パートが加わると、楽曲全体が引き締まる。ブライアンのテンションの高まりを感じさせるサビの高音パートに、マイクが素朴な旋律を付け加えることで楽曲をクールダウンさせた。そんな印象があります。



同じようなケースは、アルバム『Love You』の1曲目「Let Us Go On This Way」でも繰り返されたかもしれません。騒音状態のシンセサイザーをバックにボーカルがシャウトするエキセントリックな楽曲ですが、マイクが即興的に付け足したとされる中間部の短い旋律は楽曲にポップスとしての親しみやすさを与えています。
土星は物事を束縛、制限すると同時に、形の定まらないものを彫刻して現実化させる天体です。マイクがブライアンの楽曲に与えた旋律は土星のポジティブな働きの結果を表わしているかのようです。

【5】マイク・ラヴとブライアン・ウィルソン

さらに相性図を見ていきましょう。ブライアンとマイクの相性は悪くないどころか、ブライアンの側から見れば、マイク以上のパートナーはいないのではないかと思わせるシンボルをいくつも拾うことが出来ます。

ブライアンもマイクも、太陽、金星、海王星を含む印象的なアスペクトを持っていました。
ブライアンのチャートの金星は、さらにアセンダント、天王星、土星と密集した配置にあります。【5-1】
そして、マイクのアセンダントは双子座25度51分です。これは、魚座24度48分の太陽、乙女座26度2分の海王星と、それぞれスクエアを形成します。【5-2】
ブライアンとマイクの太陽、金星、海王星を含むアスペクトは、さらにアセンダントも巻き込んでいるということです。

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同じ天体やポイントを含むアスペクトを持っているということだけでも、双方に共通した心理傾向があるということで、相性は悪く無いと判断できるのですが、さらにこの二人の場合は、ブライアンの双子座28度28分の太陽がマイクのアセンダントと重なります。また、マイクの太陽はブライアンのアセンダントとセクスタイルを形成します。【5-3】
ブライアンの金星、アセンダント−海王星−太陽のアスペクトのラインに、マイクの太陽、金星−アセンダント−海王星のラインが優しく寄り添っている、そんな印象です。
太陽、金星、アセンダント、そして海王星が絡んだ相性図のアスペクトは、イマジネーションやフィーリングのレベルで二人が惹かれ合う関係性であることを示しています。

ブライアンの太陽は、さらにマイクの水瓶座29度41分の水星、天秤座26度48分の月とそれぞれトラインを形成します。ブライアンの太陽、マイクの水星、月とでグランドトラインが描かれるのです。【5-4】
相性図における太陽と月のアスペクトは非常に重要視されるものです。一緒に長い時間を過ごしてもまったく気にならない、気分的な同調を示すものとして、長く関係が続いた夫婦の間でよく見られるものだと言われています。
さらに、太陽と水星のアスペクトは意思疎通の容易さを示しています。太陽の意思を水星がスムースに受け取るのです。太陽にとって水星は良き理解者となります。太陽が為そうとしていることに水星が口を挟むということはないのかもしれませんが、相手の意思を正確に汲むという能力は芸術家のサポート役がもっとも必要とする能力でしょう。
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最後にブライアンの双子座17度4分の水星とマイクの魚座16度の金星とのスクエアも拾っておきましょう。【5-5】
相性図の水星と金星のアスペクトは芸術家同士の有益な関係を示していると言われています。お互いのセンスを刺激し合う関係性です。それによってさらに高いレベルへの成長が見込める。ただ、このアスペクトは90度なので衝突も多かったのではないかと思われます。

誰と一緒に曲を作りたいかという問いに、ブライアン・ウィルソンは決まってマイクラ・ラヴと即答するそうです。(『文藝別冊 ビーチ・ボーイズ』河出書房新社、2002年、p54、萩原健太氏による紹介)
これだけ相性図から好意的な素材が拾えるのなら、それももっともだと思わされてしまいます。
二人は残念ながら現在、別々の活動をしていますが、また共に活動出来ることがあれば、それはファンにとっては嬉しいことです。復活したブライアンによる新しい「ビーチボーイズのアルバム」は間違いなく魅力的な企画です。現実にはその可能性はほとんどないのかもしれませんが、その期待を星の配置によって語ることも出来るのです。


ホロスコープから見るブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴ<2>

2009年10月31日 00:39


ホロスコープから見るブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴ<1>から続き

ブライアン・ウィルソンズ・ネイタルチャート
http://www.astro.com/astro-databank/Wilson,_Brian

【1】ポップスター、ブライアン・ウィルソン

占星術では、地球を中心にして宇宙を考えます。天動説の世界観に拠っているわけです。
地上に立つ私たちのはるか上空では、月や太陽、惑星や星座が刻一刻と移動しながら様々な配置を描いていきます。ホロスコープとは、これらの天体や星座が天球のどこに位置しているのかということを記録した図表です。その中でも、人間が生まれたその瞬間の天球の配置図をネイタルチャートと呼びます。
ここには天体や星座の位置の他にも様々な計測ポイントが記録されています。
それらのポイントの中でも最も重要なもののひとつがアセンダントです。これは東の地平線が天と交わるポイントなのですが、このポイントが位置する星座や、この周辺にある天体は、チャートの中でも特別強い意味を持つとされています。

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ブライアンのチャートから、それを見てみましょう。
ホロスコープは6本の直径によって12のブロックに分割されています。このブロックをハウス、あるいは室と呼ぶのですが、第12室と第1室とを隔てる直径が円周と交わる点がアセンダントです。【1-1】
ブライアンのアセンダントは牡牛座の27度。このすぐ真上、牡牛座21度に金星が位置しています。
アセンダントの付近にある天体は、その人が生れ落ちた瞬間に東の地平線から天に昇ろうとしている惑星です。それゆえ、それらを上昇する天体、ライジング・プラネットと呼ぶのですが、金星の上昇は多くの人を惹きつける輝くような魅力を彼に授けます。
牡牛座の金星は非常に強力です。
彼の場合、アセンダントが位置する星座・・・占星術における星座は、実際の星座とは違うものなので、これをサインと呼ぶのですが・・・も牡牛座なので、その存在感はさらに強力なものになります。
そして、双子座2度の天王星と双子座5度の土星。これらも今まさに地平線から顔を出そうとしているライジング・プラネットです。

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次に、第2室を見てみましょう。【1-2】
ここに位置する太陽と木星のコンジャンクション(0度のアスペクト)は彼に、人生に対する肯定感と楽観主義を与えることになるでしょう。また、チャート第2室は金銭にまつわるハウスです。ここに、太陽と木星が位置するということは、将来に渡って経済的な発展が期待できるということを示しています。

こうして見ると、ブライアンは「悲劇の天才」である以前にポップスターの資質、あるいはポップスターの幸運に恵まれた人物であると言えます。もちろん、それだけで終わることはありません。これらの天体に第5室に位置する海王星が強力に関わることで、ブライアンのキャラクターは際立った輪郭を持って浮かび上がってきます。


【2】海王星の巨大な夢の磁力

海王星は現実を超えた世界を表わす天体です。夢、無意識、想像力。すべての人間の中に存在する茫漠として形が定まらない世界、しかし、巨大な磁力を持った世界を海王星は象徴しています。

ブライアンの海王星は第5室に位置します。第5室は創造のハウス。何かを生み出そう、何かを表現しようということにおいて、海王星の想像力が深く関わってきます。【2-1】
そして、この海王星が牡牛座の金星とトライン(120度)。想像力と美的関心の調和。芸術家、特に音楽家の天分を表すアスペクトがここに見られるのです。さらに、金星はアセンダントを挟んで天王星の持つオリジナリティ、土星の持つ物事を現実化する能力をも得ることも出来ます。この金星−海王星のラインがブライアンの創造力の核となる部分でしょう。

しかし、海王星の夢想の力は危険な一面も持っています。
海王星は自我を弱める働きも持っているのです。自分と他人、夢と現実との境界を曖昧にしていく。大抵、それは度の過ぎたロマンティックな性格へと反映されて、様々な悲喜劇を生み出すことになるのですが、ドラッグやアルコールのへ耽溺、他者への精神的な依存といった憂慮すべき事態に陥る場合もあります。
ブライアンの太陽は、海王星とオーブ(アスペクトの誤差)1度の範囲でスクエア(90度)。海王星の巨大な夢の磁力が、自我を表わす太陽を飲み込んでしまう危うさを示しています。【2-2】
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ブライアンの太陽は双子座、海王星は乙女座です。
12のサインはそれぞれ、そのサインを支配する天体を持つと考えられているのですが、双子座、乙女座の支配星はどちらも水星なのです。ということは、ブライアンの海王星−太陽のラインは水星の影響を強く受けているということになります。
水星は知性やコミュニケーションを表わす天体です。太陽と海王星に水星の色調が加わって、夢想は直観へ引き上げられる。水星の知性が奔放な想像力の受け皿となる可能性を示しているのです。
しかし、ブライアンのチャートでは水星は月とスクエアを作ります。月は無意識的に働く感情や気分といったものを表わします。知的能力が感情の揺れに翻弄されやすいものになっているのです。【2-3】
また、この月は、水星の12度手前にある土星ともスクエアです。土星が他の天体とハードなアスペクトを作ると、その部分に制限や束縛が与えられます。この場合、土星が感情や気分の自然な流れを押し止めてしまうと見ることが出来るでしょう。憂鬱気質です。
土星−月−水星のラインはたびたび不調和を起こし、水星の力は衰弱し、太陽は海王星を前に孤立してしまう。ブライアンの伝記から、そのようなイメージが浮かび上がります。

【3】ユージン・ランディとマリー・ウィルソン

ブライアンとユージン・ランディとの困難な関係は、海王星の負の側面を強く想起させます。
統合失調症とドラッグ、アルコール依存で再起不能とまで言われたブライアン・ウィルソンを徹底した治療プログラムによって回復させたのが、精神科医ユージン・ランディです。

ランディはブライアンの健康を回復させるだけに留まりませんでした。
彼は、ブライアンを精神的に従属させて、財産を不当に搾取しようとしたとされています。
そのためには、ブライアンをビーチボーイズのメンバーから引き離さなければなりません。自分をこのような困難な状況に追い込んだのは、自分の才能を利用してきたバンドのメンバーや家族たちだ。ランディはブライアンにそのように思い込ませ、また、そうした虚偽の記述を多く含む自叙伝を出版させます。最初に触れたマイク・ラヴの悪評や、ブライアンの「悲劇の天才」というイメージは、この著作に多く負っていると言われています。そうして、グループから引き離したブライアンにソロアルバムを制作させて、収録曲に自分の名前をクレジットさせる。
ブライアンの自我は精神科医の言葉に支配されてしまうのです。

ビーチボーイズは訴訟を起こして、ついに、ランディを解雇することに成功します。ランディはブライアンとの接触を禁じられ、ブライアンは精神科医の「マインドコントロール」から解放されました。では、そのことで、ブライアンは「本当の私」を取り戻すことが出来たのでしょうか。
分からないとしか言えません。
そもそも、ブライアンの自己イメージは、それ以前から、商業宣伝や世間から与えられるアーティスト・イメージとの間で揺れ続けていたはずです。彼に与えられた「天才」の称号もそのひとつでしょう。「天才ブライアン」は元々、デビュー当時のマネージャーだった父親のマリー・ウィルソンのイメージ戦略のひとつだったと言われています。
そして、こうしたイメージこそ、その人が持っている本質と同じ程度か、あるいはそれ以上に人生を左右するものとなるのです。

ホロスコープには、その人のイメージや印象がどのようなものになるのかということを表わしたポイントがいくつか存在します。その代表的なものがアセンダントとMCです。アセンダントが、ホロスコープの中でも最も重要なポイントのひとつであることは上述しましたが、MCも同程度に重要なポイントです。
ホロスコープの書き方によって異なる場合もあるのですが、ここで採用しているチャートでは、第9室と第10室を隔てる直径と円周が交わる点がMCになります。ここは、天頂、英語でミッドヘヴンとも呼ばれるポイントです。
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この二つのポイントの性質の違いについては様々な議論があって、実は簡単に説明するのが難しい部分なのですが、常識的な水準では以下のようになります。
アセンダントは、その人が生まれながらに持っている雰囲気や外見的な特徴を表わすポイントです。例えば、ブライアンの太陽は双子座に入っています。つまり、12星座占い的に見れば、彼の本質的な性格は双子座です。しかし、ブライアンが周りから双子座だと見られるかどうかは分かりません。むしろ、アセンダントが位置する牡牛座だと見なされる可能性が高い。これがアセンダントです。
一方のMCは、その人が社会に対して自分をどのように見せていくかということを表わしたポイントです。生まれながらに持っているものではなく、後年、努力して身に付けていく立ち振る舞いの仕方や雰囲気を表わしたものです。【3-1】
また、MCはその人の父親の象徴でもあります。何故かというと、MCは社会との接点を表わしています。したがって、家庭内において家庭の外、つまり、社会や仕事とつながっている存在であり、また職業人としての最初のモデルとなる父親のイメージがそこにあらわれると見るわけです。
ところが、これがとても面白いのですが、MCは父親ではなく母親を象徴するポイントだという考えもあります。社会的な自己イメージというものを考えると、それはその人が持っている価値観に強く裏打ちされたものになるはずです。その価値観には母親が子供に望んだものが反映されている。そのように考えると、MC=母親のイメージとなります。
これはどちらが正しいか正しくないのかということではありません。シンボルは同質の意味を次々と自分の中に招き入れていきます。この運動にストップをかけたとき、占星術は単なる迷信となって生きた意味を失うでしょう。シンボルは根本から多義的なのです。とりあえず、そんな見方もあると軽く考えて、基本ルールとして受け入れましょう。その手続きを経て、はじめて占いのゲームはスタートします。
さて、そのようにして見た場合、ブライアンのチャートには非常に興味深い配置があらわれます。
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調和的な海王星−金星のラインはアセンダントを経由し、折り重なる天王星と土星へと至ります。この天王星、土星とセクスタイル(60度)のアスペクトを描くのが、第3室、獅子座に位置する火星と冥王星のコンジャンクションです。【3-2】
火星は行動力、攻撃力を表わす天体です。この火星は、冥王星とオーブ1度以内で重なることによって圧倒的なエネルギーを得ています。また、獅子座で形成されていることも重要です。何か目的を達成するのに限度を知らない熱狂をもって突き進んでいくでしょう。
この火星、冥王星が、ライジングしつつある天王星、土星とソフトに調和しているのです。天王星が与える直観的な判断力によって、火星、冥王星のエネルギーはより効果的に発揮されるようになります。また、土星は行動力に現実感覚と管理能力を与えます。ブライアン・ウィルソンが持っている「強さ」のひとつの形がここにあらわれています。


さて、面白いのがこの火星と土星が位置する獅子座の3〜4度という角度です。ここからホロスコープの中心に向かって直線を引いてみると、直線は水瓶座の3〜4度の位置に到達することになります。MCは、このすぐ傍の水瓶座8度に位置しています。つまり、火星、冥王星はMCとオポジション(180度)のアスペクトを形成しているのです。【3-3】
もし、ブライアンの創造性が海王星−金星の調和に負っているのであれば、天体間の調和的な関係は天王星、土星−火星、冥王星へと引き継がれ、弓から放たれた矢が的を射るように「社会的な私」のイメージを表わすMCへと到達します。
そして、MCを父親を表わすものとして見た場合どうでしょうか。

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ブライアンと彼の父親マリー・ウィルソンとの複雑な関係は有名です。
わずかの期間ですが、作曲家として活躍した経験がある父親は、挫折した自分の夢を代行させるかのようにビーチボーイズをデビューさせました。彼がいなければ、ビーチボーイズもブライアン・ウィルソンも存在しなかったかも知れません。
しかし、彼はたびたび作品制作に口を挟み、シングル「Help Me, Rhonda」のレコーディング中にブライアンと衝突。その場で、ブライアンから解雇を通告されるのです。なお、緊迫した口論の様子は録音用のテープが回っている状態で続けられたため記録として現在も残っており、ファンの間で流通していると言われています。

オポジションは強い緊張をはらんだアスペクトです。お互いが反発しあいながらも相補的に作用し、どちらかがどちらかを無視することは絶対に出来ない関係性を表わしています。それゆえ、最もクリエイティブな可能性を秘めたアスペクトであると評価される場合もあります。
面前で解雇を突きつけたブライアンも、父親のことを無視することは出来ませんでした。その後も、すすんで父親にアドバイスを求めることがあったといいますし、なにより音楽家として生きることは父親の意思に沿って生きることだったのです。そして、例の「天才ブライアン」というイメージも父親が用意したものだった。
こうした事実を踏まえて、海王星からMCへと至るアスペクトを見ると、それが何か宿命のようなものを描いた配置であるかのように思わされてしまいます。これは過剰にドラマティックな見方ですが、占星術のシンボリズムは時にこうした語りを誘うことがあるのです。

【4】ブライアン・ウィルソンの才能のかたち

太陽−海王星はスクエアのアスペクトを形成していました。海王星のハードなアスペクトは目的達成のための持続力を奪うことがあるとされています。また、彼の天体の多くはミュータブル・サインと呼ばれる属性を持ったサインに所属しています。これは他人の行動の影響を受けやすく、自己決定が苦手であることを示すものです。

確かに、ブライアンは常に周囲に振り回され続けてきました。
完成させられなかったプロジェクトは『Smile』だけではありません。まとめきれずに途中で投げ出した楽曲は数え切れないほど存在します。ブライアンは自分自身で物事を決定して、そのことを貫徹するといったタイプの才能ではなかった。自ら人生を切り開いていった人ではなく、むしろ、流されるように人生を生きた人でした。
しかし、それでも、彼が「天才」の称号に真にふさわしい仕事をいくつか残すことが出来たのは、与えられた局面ごとに自分の可能性をフルに生かす努力を繰り返してきたからでしょう。上述したような宿命のドラマなど読まなくても、海王星−金星、天王星、土星−火星、冥王星のアスペクトは様々な可能性を示しているアスペクトです。この可能性を、ブライアンは奔放なイマジネイションの流れに芸術的な実りを与えることにおいて生かそうとした。そうしたトライアル&エラーの結果が、ビーチボーイズのディスコグラフィーとして残されているのです。


ホロスコープから見るブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴ<3>へ続く

ホロスコープから見るブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴ<1>

2009年10月31日 00:38


「天才と凡才」は、これまで数々の物語が取り上げてきたテーマです。
非凡な才能を持った人物とそうでない人物との対比、後者が前者に抱く、憧れや恐れ、嫉妬といった感情は様々なドラマを生み出し、そのようなドラマに多くの人々が魅了されてきました。
ビーチボーイズの中心メンバー、ブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴが面白いのは、彼らが「天才と凡才」ではなく、「天才と嫌われ者」としてイメージされていることです。
「20 世紀のモーツアルト」、あるいは「悲劇の天才」と謳われるブライアン・ウィルソンですが、彼のソングライティングパートナーであるマイク・ラヴについては賞賛よりも悪評が目立ちます。軽薄で愚鈍なショウマン、セールスマン、頑迷な保守主義者で抑圧的な道徳の信奉者、右派共和党員といったところがそのヴァリエーションでしょう。

そうした悪評の中には明らかに不当なものもあります。噂話の域を出ないもの。ブライアンをめぐってマイクと敵対した精神科医、ユージン・ランディの悪意ある中傷に端を発したもの。不幸な誤解。あるいは彼の政治信条について。彼を右翼と見るのは不適当である。彼の保守性は多くのアメリカ人が持つ保守性と同じものであって問題にするほどのことではない。さらに、ヴァン・ダイク・パークスなどグループのレコーディング・パートナーと起こしたトラブル。これにも正当な理由があった。彼だけを非とすることは出来ない・・・等々、マイク・ラヴについてのネット上のフォーラムを覗くと、こうした反論や弁護を読むことが出来ます。リンク先のJoost氏の反論は明快で、加えて、マイク批判者の「デニスもカールも死んだのに、なぜかマイクはまだ生きている」というユーモアを含んだ悪口に「アル中(デニス)やチェーンスモーカー(カール)より、健康マニア(マイク)の方が長生きするよね」とユーモアで応じる余裕も見せています。(デニスは飲酒による海難事故、カールは肺ガンで亡くなりました。マイクは今でも毎朝ヨーガの行をしているらしいです。)
しかしそれでも、マイクの軽薄で愚鈍で保守的なショウマンというキャラクターは残ります。彼をサニー・カリフォルニアの陽気なオプティミズムの象徴として積極的に評価しようとする人たちでさえも、彼や彼が残した作品には精神的な深みのようなものが欠けていると見なすのではないでしょうか。一方のブライアン・ウィルソンが、敏感すぎる感受性だとか生来の無垢さだとか、そのようなキャッチフレーズで語られるのとまったく対照的です。

このようなイメージから、チャートの読み手は自由にはなれません。星の配置は、彼らの良く知られたイメージを描いていることもあれば、それとは異なる姿を描いていることもあります。いずれの場合も、読み手はよく知られたイメージと、チャート上のシンボルとを照合しながら、ひとまとまりの人物像を描くことを試みることになります。

イメージと星のシンボルとの相違。ここに焦点を絞って見ていきましょう。
心を病んだ天才、ブライアンウィルソンと、愚鈍で軽薄なショウマン、マイク・ラヴ。
ブライアンが成し遂げた独創的な仕事の数々が魅力的であることは疑いえません。しかし、それとは別に、マイク・ラヴのキャラクターもまた魅力的なのです。ファンたちから馬鹿にされ、軽んじられるマイク・ラヴ。しかし、馬鹿にされればされるほど、軽く見られれば見られるほど、彼のキャラクターは立ってしまう。これは間違いなく「面白い」のです。

二人のチャートは占星術版ウィキペディアであるAstro-Databankのものを利用させてもらいました。
Astro-Databankには多くの有名人のネイタルチャートが収められており、ブルース・ジョンストンを除く他のビーチボーイズメンバーのチャートも閲覧可能となっています。ブルース・ジョンストンが抜けているのは、彼の出自が孤児ということもあって、正確な出生時間が不明だからでしょう。

それから、これは占星術の知識がまったくない方に向けての注意書きです。
ネイタルチャートから、その人物の才能の傾向のようなものを読むことは出来るのですが、現実にどの分野で発揮されるのか、また、どの程度、社会的な成功を収められるのかということを読むことは出来ません。その才能は音楽家として発揮されることもあれば、美容師として発揮されることもあります。また、虚言癖として発揮されれば、その人は詐欺師になるかもしれません。
しかし、それとは逆に、成功した音楽家のチャートから、彼の仕事がどのような種類の才能によって為されたのかということを読むことは出来ます。チャートのシンボリズムが描くのは、その人に備わっているものの傾向、パターンです。チャート読解についての、この微妙なニュアンスをご理解頂ければと思います。


ホロスコープから見るブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴ<2>へ続く


参考エントリ:ビーチボーイズをめぐる感受性の変化について
http://montvariations.blog19.fc2.com/blog-entry-28.html

ビーチボーイズをめぐる感受性の変化について

2009年09月12日 08:09


ビーチボーイズといえば「サーフィンUSA」、ではない。
渋谷系華やかなりし1990年代に音楽的自意識を獲得した私にとって、ビーチボーイズは初めからサーフィン&ホットロッド・ブームを代表するオールディーズ・グループではなかった。それどころか、ビーチボーイズのファースト・インプレッションは、彼ら自身の楽曲によって与えられたものでもなかった。「God Only Knows」の旋律を引用した、フリッパーズ・ギターの「ドルフィン・ソング」によって、彼らの最初のイメージが決定付けられたのである。

私は最近まで、このことを口に出すのは、あまり良くないことだと思っていた。発言の対象を特定の「世代」や趣味の共同体に閉じ込めてしまい、そこに属さない人たちとのコミュニケーションを切断してしまう危うさを持った発言だからだ。
しかし、それと同時に、1990年代以降のビーチボーイズのイメージの変化について、上手に説明できないもどかしさも感じていた。90年代中盤以降のビーチボーイズ再評価は、単に新しいファンの獲得という以上に、彼らを、音楽についてのある種の美学的態度を表すアイコンのような存在にしてしまった印象があった。このあたりを上手に説明することが出来ない。
ビーチボーイズの初期のサマーソングが名曲の宝庫であることは疑い得ない。
それでも、彼らのイメージが、『Pet Sounds』や、『Smile』収録予定だった楽曲たち、あるいは緑の室内楽アルバム『Friends』やソフトロック・アルバムの傑作『Sunflower』によって、より支配的に描かれるとはどういうことなのだろうか。

これは、彼らの音楽に対する、受け手の感受性の変化を物語っているのではないか。
つまり、ビーチボーイズの楽曲の価値の中心をどのような部分に見出すのか、その評価が変わった。
そうであるのなら、「ドルフィン・ソング」においてビーチボーイズを語ることにも、幾許かの妥当性が与えられるはずだ。おそらく、暗闇の中から静かに聴こえてくる「God Only Knows」のフレンチホルンの旋律が湛えている感受性こそ、再評価以降のビーチボーイズの音楽の中心的な価値とされたものである。そうでなければ、『Love You』のようなアルバムの再評価もありえない。ひときわ奇妙な『Wild Honey』にも同じものが流れている。
『ヘッド博士』におけるフリッパーズは、それらを直観して取り出し、再構成したのだ。

1960年代、ポップミュージックの創造性がロックという形で爆発した時代、ビーチボーイズは、ポップミュージックが持つ「甘さ」を、「深さ」や「広がり」といった感受性と結びつけようとした。イマジネイションの果てしない海の中で響かせようとした。そのような音楽的感受性において、ポップミュージックの理想形を実現しようと試みた。
90年代以降、このような美学的な価値を担うアイコンという立場がビーチボーイズに、あるいは、ブライアン・ウィルソンに与えられたのだ。ビーチボーイズはビートルズがそうであるように、しかし、ビートルズとは異なる意味において、ポップミュージックの歴史/美学を代表するアーティストとなったのである。